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東京日記~エピローグ~

三船恭太郎
(2009年5月29日 05:13)

作文コンクールの表彰式を無事に終え、僕は再び新幹線のホームに立った。

 

土曜日の午後ということもあり、ホームは老若男女、いろいろな世代の人たちで溢れかえっていた。

しかしその大勢の人たちも、『これから旅に出る人』と『これから家路につく人』の、大きく2つに分けられる。

 

洋服の皺の具合、お土産の紙袋、ベンチに座り、投げ出した足に張られた絆創膏、バックから覗くミッキーマウスの耳...。

うきうきと楽しげな会話。その一方で、欠伸。

 

そんな、さまざまな人たちの吐き出す、さまざまな空気の流れを一旦止めるように、新幹線の発車のベルが鳴り響いた。

少し緊張した感じで、ホームに視線を戻した。

僕が乗るのは、この次にホームに入ってくる新幹線だ。

 

ゆっくりと、そして次第に加速していく新幹線。

「あっ、ホタテおじさん?!」

一瞬にして通り過ぎた窓に、ホタテおじさんらしき横顔があった。

でも、それを確かめる手段はない。

僕は走り去っていく新幹線を見ながら、ホタテおじさんたち、床屋さん、印鑑屋さん、そして後光の人、一人ひとりの顔を思い浮かべようとした。

 

しかし、その輪郭はもう...おぼろげになり始めていた。

忘れたくないけど、忘れちゃうんだろうな...。

 

僕の頬や耳を撫でるように、なまぬるい風が吹いた。

新幹線が再び、ホームに滑り込んできた。

 

隣に座る人は、どんな人だろう?

 

僕は、大きく1歩右足を踏み出し、新幹線に乗り込んだ。

 

長い間、ご乗車いただきありがとうございました。

東京日記、終点に到着いたしました。

どちらさまもお忘れ物ございませんよう、お気をつけてお降りください。

 

ドアが、閉まります!

 

では、ここからおまけ!  ~東京日記こぼれ話~ 

盛岡を経ち、怒涛の初日を終えた僕と母は、翌日、表彰式の行われるホテルにやって来た。

母は2つある印鑑から、迷うことなく新品の『三船』の印鑑を手にして受付に向かった。

受付にはすでに、5,6人が順番に並んでいた。

名札や式次第を手渡された後、少し横にずれて旅費の精算をするという手順になっていた。

ほどなく僕の順番になり、僕は受け取った名札を曲がらぬように注意しながら、ブレザーの胸に付けた。

母は差し出された紙にサインをして印鑑をついた。

印鑑屋さんのように『見事にくっきり』ではなかったものの、鮮やかな朱色は十分、僕らの目に染みた。

母が印鑑を立派なケースに納め、次に並んでいる人にその場を譲ったそのときだった。

「あっ!」

ま、またぁ?ドキリとして母を見たが、「あっ!」を発したのは、母の後ろの人だった。

「すみませ~んっ、印鑑忘れました」

動揺したように早口で話すその人に、受付の人はにこやかに穏やかな口調で話した。

「大丈夫ですよ。サインだけで結構です」

僕と母は同時に声を上げた。

「えーーーーーっ?!」

(な、なに?なんでこの人たちに、こんな反応されなきゃなんないの?)受付の人と印鑑を忘れた人は、目を丸く見開いている。

慌てて口を押さえたが、もう遅い!

僕と母は目を伏せ、そそくさと会場に入った。

 

 

『東京日記』、お楽しみいただけたでしょうか?

本来の目的は、宿題の日記に悩んでいるみんな!楽しんじゃおうよ!でした。

でも一番、楽しかったのはやはり...僕ですね。

長~い間のお付き合いありがとうございました!!

 

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