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東京日記その24~最終話・街の息遣い~

三船恭太郎
(2009年5月24日 16:16)

~大きなお世話のご注意~

めずらしく、東京日記を2話一度に更新しました。その23~ズボンの折り目~から先に読んでいただくとうれしいです。

さあさ、ようこそ!『東京日記その24』の本文は以下からです。

 

 

恐る恐る振り返ると、母は笑ってるような、泣いているような複雑な表情で、印鑑ケースを手にしていた。

な~んだ、印鑑か。なにさぁ、「あっ!」なんて驚かさないでよ...。

 

ん?

母は、両手に印鑑を持っていた。

 「な、なにそれ。忘れたんじゃなかったの?」

驚いて目を見開いている僕に、母はため息をつきながら言った。

「まっ、結果的にそういうことになるわね。でもね...」

 

『でもね』と言った途端、母の顔に自信がみなぎった。

「この印鑑、いつこのバックに入れたか覚えてないけど、旅先では何が起こるかわからないからって用心のために入れておいたのよ。用意周到だわ~私」

 

『用意周到』とは、用意が十分に整って、手抜かりのないこと...って入れたこと忘れてたら十分手抜かりじゃ~ん!!

 

しかし、確かに旅先では何が起こるか、わからない。

そして、誰と出会えるかもわからない。

 

僕は再び、窓から赤坂の街を見下ろした。

まるでミニチュアのように、ビルや商店街が小さく遠く見えた。

その建物の窓、1つ1つの中に人が暮らしている。

 

蒸しタオルの手の床屋さん...チャキチャキとリズミカルなハサミの音が聞こえます。

路地の入り口でぶつかったお姉さん...今日のランチはいかがでしたか?

ゴディバのお姉さん...イチゴのチョコの次は何を作っていますか?

そして、印鑑屋さん...くっきりと付いた『三船』の鮮やかだったこと。

 

小さな窓からは、今日お会いした方たちの息遣いが聞こえてくるようだった。

 

雲の間から陽が差し込んできた。

赤坂の街は、白く霞んだような柔らかい陽に包まれた。

僕は、鼻歌を歌いながら荷物を片付ける母を責める気にはならず、窓に反射した金色や緑色の光に目を細め、眼下に広がる赤坂の街を飽きずに眺めていた。

 

 

次回予告

あれ?『完』なのに次回?

次回はエピローグと、東京日記こぼれ話をお送りします。

お楽しみに!!

 

~お知らせ~

「ぜったい書いてねっ」と母が言うので、ちょっとお知らせです。

『東京日記』は、事実に基づいたフィクションです!

「私のイメージが崩れるじゃないの(怒)」と母は言います。

では、どこが事実でどこがフィクションなのか?!

それも、母のイメージとやらのために、明かさないでおきましょう。

 

 

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