外側から少しずつ融け始めたアイスクリームを、ぐるりとへらを回しては食べ、回しては食べる僕と母。
新幹線で売っているアイスクリームがかたいのは、のぼせ上がった頭をちょっとずつ、クールダウンさせるためかもしれない...って僕らの場合限定だろうけど。
母は、手帳の後ろに付いている『地下鉄路線図』を見ていた。
普段、電車での移動に慣れていない僕らには、東京での電車の乗り継ぎは、結構緊張するものだ。
「宿泊のホテルは赤坂だから、東京駅から丸の内線で...」
僕は脇から覗き込み
「あっ、赤坂見附みつけた!」
...偶然漏れたとはいえ、自分でも驚くほどの低レベルのダジャレ。
口直しにと、アイスを口に入れたその時
「フッ!」
窓側から声が聞こえた。
今度は僕らがゆっくりと顔を回して、ホタテおじさんを見る番だ。
ホタテおじさんは、あきらかに(しまった!)という顔で、バツ悪そうに窓の外に目を逸らした。
書類は閉じて膝の上に置いたままだ。
厚くおおわれた雲から、少しだけ覗く金色の太陽。乾いた道路。埃を被りくすんだ色の車。
新幹線に乗って約2時間。
道路の両脇にうず高く雪が積まれた盛岡の景色とは、別の世界が広がっていた。
「ホテルは駅の真向かいらしいから、迷うことはないし...」
母が話すのを聞いていた僕は、
「そうだ!」
また×2大きな声を出してしまったが、もうホタテおじさんの目を気にすることはない。
だってさっきさぁ~、寒いダジャレに受けたでしょ~!
「あのさ、ホテルの人に聞けばいいんじゃない?はんこやさんの場所」
「あっ、そうよね。ホテルの人ならわかっているわよね」
「そうだよ!」「そうよね!」
僕らはまだ着いてもいないホテルの、そしてまだ見ぬホテルの人に頼りきり、安心感に浸った。
ちょうど食べごろになったアイスが、喉の奥に流れていく時の甘さが嬉しかった。
ホテルの人...その人は今、窓から見た太陽のような眩いばかりの金色の光の中から、僕らに「さあ、おいでなさい」と、手を差し伸べていた。
そう、あなたは後光の人。
「この新幹線は終点東京に、9時51分着の予定でございます。終点東京に近づきますと、お手洗いが大変混雑いたしますので、お早めにご利用願います」
車内のアナウンスも、なんか心に染み入る。
ん?今のうちにトイレを済ませって? つづく
次回予告
現実には何も解決していないのに、一時の安心感に浸る僕と母。
果たして僕らは、後光の人に会えるのだろうか?
お待たせいたしました!ようやく次回、東京到着です?
日記のくせに長くてすみません。
読んで下さってありがとうございます!
もう少し、お付き合いください。









