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東京日記その8~後光の人~

三船恭太郎
(2008年9月13日 10:36)

外側から少しずつ融け始めたアイスクリームを、ぐるりとへらを回しては食べ、回しては食べる僕と母。

 

新幹線で売っているアイスクリームがかたいのは、のぼせ上がった頭をちょっとずつ、クールダウンさせるためかもしれない...って僕らの場合限定だろうけど。

 

母は、手帳の後ろに付いている『地下鉄路線図』を見ていた。

普段、電車での移動に慣れていない僕らには、東京での電車の乗り継ぎは、結構緊張するものだ。

 

「宿泊のホテルは赤坂だから、東京駅から丸の内線で...」

僕は脇から覗き込み

「あっ、赤坂見附みつけた!」

...偶然漏れたとはいえ、自分でも驚くほどの低レベルのダジャレ。

口直しにと、アイスを口に入れたその時

「フッ!」

窓側から声が聞こえた。

 

今度は僕らがゆっくりと顔を回して、ホタテおじさんを見る番だ。

ホタテおじさんは、あきらかに(しまった!)という顔で、バツ悪そうに窓の外に目を逸らした。

書類は閉じて膝の上に置いたままだ。

 

厚くおおわれた雲から、少しだけ覗く金色の太陽。乾いた道路。埃を被りくすんだ色の車。

新幹線に乗って約2時間。

道路の両脇にうず高く雪が積まれた盛岡の景色とは、別の世界が広がっていた。

 

「ホテルは駅の真向かいらしいから、迷うことはないし...」

母が話すのを聞いていた僕は、

「そうだ!」

また×2大きな声を出してしまったが、もうホタテおじさんの目を気にすることはない。

だってさっきさぁ~、寒いダジャレに受けたでしょ~!

 

「あのさ、ホテルの人に聞けばいいんじゃない?はんこやさんの場所」

「あっ、そうよね。ホテルの人ならわかっているわよね」

「そうだよ!」「そうよね!」

 

僕らはまだ着いてもいないホテルの、そしてまだ見ぬホテルの人に頼りきり、安心感に浸った。

ちょうど食べごろになったアイスが、喉の奥に流れていく時の甘さが嬉しかった。

 

ホテルの人...その人は今、窓から見た太陽のような眩いばかりの金色の光の中から、僕らに「さあ、おいでなさい」と、手を差し伸べていた。

 

そう、あなたは後光の人。

 

「この新幹線は終点東京に、9時51分着の予定でございます。終点東京に近づきますと、お手洗いが大変混雑いたしますので、お早めにご利用願います」

車内のアナウンスも、なんか心に染み入る。

ん?今のうちにトイレを済ませって?                                つづく

 

次回予告

現実には何も解決していないのに、一時の安心感に浸る僕と母。

果たして僕らは、後光の人に会えるのだろうか?

お待たせいたしました!ようやく次回、東京到着です?

 

日記のくせに長くてすみません。

読んで下さってありがとうございます!

もう少し、お付き合いください。

 

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