母が差し出した携帯の画面には
そろそろ、「あっ」が出る頃かと思います。
で、なに忘れた?
父からのメールだった。
ありゃりゃ、お母さん、完全に読まれちゃってるよ。
「くっ...」母は、すごい勢いでメールを打ち始めた。
窓の外を眺めていた時より、口を尖らせながら。
「失礼いたします」
カタン、カタン...。車内販売のお姉さんがまた、近づいてきた。
母はメールを打ち終え、携帯をパタリとたたむと
「アイスクリーム下さい。バニラと抹茶を1つずつ」
と気合の入った声で言った。
お姉さんは、(やったじゃないボク、子供なんだからホタテよりアイスよ!)と言わんばかりに、そしてにっこりとアイスクリームを手渡してくれた。
「ちょっと、頭、冷やさなくちゃ」
母は僕の手から、抹茶アイスを取った。
まあ、理由はともかくとして、アイスゲットだ。
しかし母は、またしても×2、大きな声で
「かたっ!!」
入念な首回しを終えて、再び書類を読んでいた「ホタテおじさんお二人目」の顔が、ゆっくりとこちらを向き、僕と視線があった。
僕とホタテおじさんの、心の会話が始まった。
ホタテおじさん(君のお母さん、ずいぶんと賑やかだね)
僕(すみません。わかりやすいタイプの人なんで...)
ホタテおじさん(君も苦労するねぇ)
軽く頭を下げた僕に、ホタテおじさんは静かに頷いた。
「新幹線で売ってるアイスって、どうしてこんなにかたいのかしらねぇ」
「さあ...。でも、そのうち融けて...」
「早く、頭を冷やしたかったのに...」
「そうだ、お父さんへのメール、なんて打ったの?」
「心配御無用!楽しい旅です。って」
「えっ?ウソじゃん」
自分の声に驚いた僕は、とっさにホタテおじさんを見た。
ホタテおじさんの目は、やっぱり親子だねぇと、語っていた。
そして、母は堂々と言った。
「そうです。嘘です。だから、絶対に探さなきゃ!はんこやさん」
バキッ!母のアイスのへらが折れた。
母は、本気だ! つづく
次回予告
アイスを食べながら(へらは、またお姉さんにもらいました)、はんこを手に入れる方法をあれこれ考える僕と母。
いよいよ新幹線は、終点東京へ着くのだろうか?
何だか、この調子だと、大宮あたりかもしれません。
次回もお楽しみに!









