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東京日記その7~嘘から出た本気~

三船恭太郎
(2008年9月 2日 07:01)

母が差し出した携帯の画面には

 

そろそろ、「あっ」が出る頃かと思います。

で、なに忘れた?

 

父からのメールだった。

ありゃりゃ、お母さん、完全に読まれちゃってるよ。

「くっ...」母は、すごい勢いでメールを打ち始めた。

窓の外を眺めていた時より、口を尖らせながら。

「失礼いたします」

カタン、カタン...。車内販売のお姉さんがまた、近づいてきた。

 

母はメールを打ち終え、携帯をパタリとたたむと

「アイスクリーム下さい。バニラと抹茶を1つずつ」

と気合の入った声で言った。

 

お姉さんは、(やったじゃないボク、子供なんだからホタテよりアイスよ!)と言わんばかりに、そしてにっこりとアイスクリームを手渡してくれた。

 

「ちょっと、頭、冷やさなくちゃ」

母は僕の手から、抹茶アイスを取った。

まあ、理由はともかくとして、アイスゲットだ。

しかし母は、またしても×2、大きな声で

「かたっ!!」

 

入念な首回しを終えて、再び書類を読んでいた「ホタテおじさんお二人目」の顔が、ゆっくりとこちらを向き、僕と視線があった。

僕とホタテおじさんの、心の会話が始まった。

ホタテおじさん(君のお母さん、ずいぶんと賑やかだね)

僕(すみません。わかりやすいタイプの人なんで...)

ホタテおじさん(君も苦労するねぇ)

軽く頭を下げた僕に、ホタテおじさんは静かに頷いた。

 

「新幹線で売ってるアイスって、どうしてこんなにかたいのかしらねぇ」

「さあ...。でも、そのうち融けて...」

「早く、頭を冷やしたかったのに...」 

「そうだ、お父さんへのメール、なんて打ったの?」

「心配御無用!楽しい旅です。って」

「えっ?ウソじゃん」

自分の声に驚いた僕は、とっさにホタテおじさんを見た。

ホタテおじさんの目は、やっぱり親子だねぇと、語っていた。

 

そして、母は堂々と言った。

「そうです。嘘です。だから、絶対に探さなきゃ!はんこやさん」

 

バキッ!母のアイスのへらが折れた。

母は、本気だ!                                                                                               つづく

 

次回予告

アイスを食べながら(へらは、またお姉さんにもらいました)、はんこを手に入れる方法をあれこれ考える僕と母。

いよいよ新幹線は、終点東京へ着くのだろうか?

何だか、この調子だと、大宮あたりかもしれません。

 

次回もお楽しみに!

 

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