1泊2日の日程だったが、表彰式という特別の行事であることに加え、東京と岩手の気温差が読めないため、ブレザーや靴、そして備えすぎるほどの着替えで、鞄はどんどん膨らんだ。
早すぎる時期から始めた母の荷造りは、こんな時は、あんな時はと、次々と浮ぶ不安を1つ消すごとに、1つ荷物が増えていくようだった。
例えば、ガムテープ...紺色のブレザーのほこり取り用にもっていくらしい。
そして母は、これら荷物のリストを、ホテルへ宅配便で送るもの、自分の手荷物、僕の手荷物と3枚に分けて作っていた。
リストにはもちろん、チェック欄があり、出発当日の朝に全てのチェックを終え、安心して旅立つ予定だ。
ここまで周到に準備するのには、理由があった。
母は、自他共に認める『おっちょこちょい』なのだ。
旅行に限らず近くまで外出する時ですら、歩き出して、もしくは車に乗り込み暫くすると、「あっ」。
父も慣れたもので、「あっ」を聞くや否や、車の舵を切るのだった。
しかし、近くへの外出と違い、さすがに東京で「あっ」と言われても、すぐに戻るわけにはいかない。
しかも今回は、僕との2人旅。
母は家を出る直前までリストを睨み、「完璧だわっ」と玄関のドアを開けた。
まさか、リストそのものから、もれている物があろうとは思いもしないで。
父の車を見送った僕らは、駅に入り、『はやて・こまち2号』の出発するホームを確認した。
11番ホーム。僕は一気に階段を駆け上がった。
リリリリリ...。ホームには、発車を告げるベルが鳴り響いていた。 つづく
次回予告
母より一足先にホームに着いた僕。
遺伝とは恐ろしいもので、僕自身、波乱を予感させる旅立ちとなる。
新幹線よ、いつになったら走り出すのだ!(定時刻です。byJR東日本)あっ、そうですね。
次回もお楽しみに!









